《月に憑かれたピエロ》。なんと想像力を湧き立たせる名前でしょう。レコードを選ぶとき、一丁前に「このジャケットで演奏の悪いはずがない」と宣ったりいたしますが、その体でいくなら「この題名で曲の悪いはずがない」です。
事実、そんな題名から入ったわたしも、いつの間にやら《ピエロ》からシェーンベルクへのめり込み、ベルク、ウェーベルンとお決まりの道筋を辿ったのでした。しかし、未だに《ピエロ》は格別好きな作品で、機会あらば聴くようにしているのです。
さて、その聴く機会が思いもかけぬ形で訪れました。桐朋音大の学生さんたちが学園祭で演奏するというのです。幸いご近所であることもあり、早速お邪魔してきました。
プログラムは、シェーンベルク論、作品解説、全訳詩と盛りだくさんで、天井にはプロジェクターで訳詩が投影されるという仕掛けもあり、この演奏への意気込みが大いに感じられました。
演奏について古今の名演と比べるのは意味のないことですが、プログラムの意気込みそのままに、作品に近づこうという気持ちの感じられた演奏でした。歌手の声の質も曲想に合っていたように思います。目を閉じて聴いているうちに、いつしか《ピエロ》の世界を垣間見ることができました。
このような難曲(技術の面だけにとどまらず)